施設案内GUIDE

瀋芳園の建造物と書Chinese garden building ’Shěn fāng yuán’ & book

庭園の建造物は明・清代の風雅で素朴な建築様式が採用され、中国製の建材が用いられています。
特に屋根の瑠璃瓦は、中国古代建築の中でも王宮建造物以外に使用できない特別なものです。

垂花門(すいかもん)

すいか門
瀋芳園の正門です。門の両脇に設置された石獅子は、札幌の姉妹都市・瀋陽市から札幌市への贈り物です。
瀋芳園は札幌市の姉妹都市である中国瀋陽市からの出展で、同市により名付けられました。

瀋芳園
『瀋芳園(Shěn fāng yuán)』の名には、「万古流芳(永遠に名を残す)」の意が込められています。
垂花門に掲げられた園銘板「瀋芳園」(右から)
書:沈延毅氏

太湖石(たいこせき)

太湖石
垂花門の内に据えられた「太湖石(Tàihú shí)」は、唐代末に中国江蘇省にある太湖の底から発見されたことにより名付けられ、命名者は詩人白楽天だと言われています。
一種の石灰岩が湖水あるいは風雨による侵食作用を受けてこのような独特の形態を呈しています。その鑑賞点は「痩(Shòu)、透(Tòu)、漏(Lòu)、皺(Zhòu)」にあるとされます。
(※) 写真は、2018年(平成30年)9月5日以前のものです。

現在のたいこ石
なお、現在の「太湖石(Tàihú shí)」は、2018年(平成30年)9月6日に発生した北海道胆振東部地震の影響により写真のようになっています。

滴翠
太湖石に刻まれた『滴翠(Dī cuì)』とは、太湖石が長期間湿潤条件下にあると苔が付着して翠(ひすい)のような緑色を呈し、これが小雨や濃霧の中で水を含み、水滴がこぼれんばかりになる、という意です。
書:徐熾氏

遠香亭(えんこうてい)

遠香榭
遠香亭は池の水際に建てられた長方形の亭(中国風あずまや)です。
亭は、もたれながら休憩し景色を眺める所で、中国庭園では重要な建築物の一つです。山上、林中、路傍、水際に置かれ、その形も正方形、長方形、六角形、八角形、円形等いろいろあります。
遠香亭には、『遠香榭』という銘板が掲げられています。

遠香榭
『遠香榭(Yuǎn xiāng xiè)』の名は、瀋陽の庭がはるか遠くの日本へと渡り、その香りをとどめる、という意です。
銘板「遠香榭」(右から)
書:徐熾氏 (次の2点も同氏の書)

景移蓬島水辺明 苑落東瀛衣帯近
池側の柱にある2点の書
『苑落東瀛衣帯近』は、瀋芳園がこの地に完成し一衣帯水(帯のような狭い海を隔てている)の隣国がさらに近いものになった、の意です。
『景移蓬島水辺明』は、中国の北方庭園の景観が東方に渡りこの博覧会に出展されることになった、もともと蓬島(伝説で渤海中二あるといわれる蓬来仙人の里)のように美しい札幌にまたひとつ麗しい景色が添えられることだろう、という内容です。

繍誼亭(しゅうぎてい)

繍誼亭
繍誼亭は山上に置かれた六角の亭です。
繍誼亭には、『繍誼亭』という銘板が掲げられています。

繍誼亭
『繍誼亭(Xiù yì tíng)』とは、友好親善(友誼)を編む(繍)亭をいう意を含んでいます。
銘板「繍誼亭」(右から)
書:李仲元氏

瞻碧/賁華

瞻碧/賁華
通路に設けられたくぐり門の両面には、『瞻碧(Zhān bì)』と『賁華(Bì huá)』という銘板が掲げられています。

瞻碧
瞻(Zhān)=見ること、碧(bì)=緑をあらわします。
『瞻碧(Zhān bì)』とはすなわち樹の緑、草の緑、山の緑、水の緑を見ること、の意です。
書:李仲元氏

賁華
賁(Bì)=飾ること、華(huá)=華麗、美しいの意です。
『賁華(Bì huá)』とは、ここの草も木もみな美しく健やかに繁茂し、職人の手でさらに飾り立てることは必要ないほどだ、という意です。中国の「文心雕龍.原道」という文献にある「草木賁華、無待錦匠之奇」からとったものです。
書:徐熾氏

書について

各施設を飾る書は、中国でも評価の高い書法家の方々の手によるものです。
いずれも、本来は国外への持ち出しが禁じられるものですが、「'86さっぽろ花と緑の博覧会」への出展にあたり、特別に札幌市に贈られました。

  • 沈延毅氏:中国書法家協会名誉理事、遼寧省書法家協会主席、瀋陽市文史館館長
  • 徐熾氏:遼寧省書法家協会理事、瀋陽市書法家協会秘書長
  • 李仲元氏:中国書法家協会会員、遼寧省書法家協会理事、瀋陽市書法家協会副主席、瀋陽故宮博物館副館長
※肩書きは1986年当時